戸田てこの「て、ことだ!」 -5ページ目

梨と現実

友達に紹介された男の子と

映画に行った。


行ったにもかかわらず、

話が弾まなくて、

後半はずっと、


昨日おばあちゃんちでもらった梨を

バーに持っていって

マスターにあげよう、


てことばっかり考えていた。


梨がすきだからなー、あの人は。


と思って

思い出し笑いまでするしまつだった。


帰ってきたら

さっそくお風呂に入って

なしを携えて

バーに勇んで出かけたけれど


バーはあいていなかった。


なんか、神さまに

「現実から逃げるな!」と言われている気がしました。


子どもマスター

酔っ払っているからなのか

今日はやたらよくしゃべる


「お会計」て言っても

きこえないふりをするし


もう飲めないよ

とコップを返しても

「じゃあ、お会計」て

言わない


仕方ないから付き合ってやろうか

と思いつつ

少し嬉しい


「俺はけん玉うまいんだ」と

カウンターからでてきて

けん玉とヨーヨーを披露。

子どもみたいだなあ


この歌いいから聞け

さだまさしを5曲も聴かされる


全然ロックじゃなくて

かわいいなあ


この人、意外にこういうところあるんだよ

まあ、みんなは知らないと思うけど


と、誰にかは知らないけれど

ちょっと自慢したい気分


ばからしーぜ

やーめたやめた

ばからしーぜ

恋なんて


めんどくさいし

やめた


友達のほうが

らくでいいや。

あたしだけの言葉

誰にも

聞こえずに

愛を歌う


誰かの

歌なんて

真似したくない


誰の言葉も

借りずに

あたしはあたしの言葉で


君に

伝えたい



誰にも似てない恋を

しているはずだから


誰にも似てない君を

好きなんだから


あたしは

あたしだけの言葉で




夕陽の帯

たぶん一生愛せる人を見つけてしまった

なのにたぶん一生この気持ちが届くことはないとわかってしまった


たぶん一生幸せに暮らせる人を見つけてしまった

なのにたぶんずっとずっとこのまま別々だとわかってしまった


飛行機の中から

夕陽の帯が

闇の夜に

ゆっくりなじんでとけてくのを

見ていたら泣いた


どうしてもっとうまくやらない?

どうしてもっとうまく選べないんだろう?


あなたと友達になれて

ほんとうによかったけど

こんなふうな気持ちになってしまうなら

友達にならなければ

よかった

こわいこい

先を行く彼の

日に焼けた肩が

夕焼けみたいに赤くて

目が離せない


好きにならないと

決めたのに


なんだか

ここが

苦しい


スーパーに買出しに行ったとき

少し肩がくっついた


わざとじゃないのが

よけい恥ずかしくて


どうしよう

どうしよう

ナキゴト

今日

一日中

考えていたことは

誰かの

おもには

きみの

その

柔軟剤のする胸に

弾丸のように

飛び込んで

窒息するぐらい

顔をすりつけて

思い切り

泣き言を言いたい

ということでした

ああ

ああ

なんて

苦しいんだろう

ひとりぼっちだということは



スーパーフレンズ

いっしょにいてね


あした


あさって


しあさって


あえないのがさみしいから


いっしょにいてね


電車が私の駅に着くまで


電車のドアが閉まるまで


さっきまで


みんなといたから


今日は


ひとりで帰るのが


なんだか


ひとりじゃないみたいで


ふわふわと


踊るように家に着いたよ



ともだちってすごいね。

ゆーあーべりーせくしーがい。

昨日、君と友達を引き合わせた。

友達は帰り道、私に言った。

「たしかにてこが彼のこと『セクシー』って言ってた意味がわかる」


私はなんだかうれしかった。


満足だった。


そうだ

君はセクシーなんだ。


暗闇の中で

レコードを選ぶ横顔の

その睫毛の長さや


ひじのつっぱった感じ


あの肩甲骨も


セクシーだ。



どうにかして

誘惑できないものか。


それを人は煩悩と呼ぶ。


恋ととても似ている。

そこんとこよろしく

もっと正しい恋の仕方を

他の人は知ってるんだろうな

自分にちゃんと合った恋の仕方を


いつまでたっても小学生みたいな自分がいやんなる


並んで歩いてると

時々、手があたるんだよ


それ、気づいてんのは私だけなのか

それ、どきどきしてんのは私だけなのか

その気持ちが恋なのかとか

ただのヨッキュウフマンなのかとか


ぜんぶわかんないまま

歩いてるんだよ


そこんとこ、誰かかわりに聞いてほしいよ