戸田てこの「て、ことだ!」 -7ページ目

ラブホリック

きのう会っていた人は

ほんとうはともだちなんかでなくて、


きのう会っていた人は

あたしの人生最大のカルマ


あんたはあたしの人生最大のカルマだと伝えたら

そのひとは

「ごめんね、生まれてきて」と言った

あたしたちは笑って、


それから

キスにはずいぶんいろんなしゅるいが

あることを知った


やめられないの

ずっとやめられない


とおくまでとおくまで

いこう

とおくまでとおくまで

あるこう


いないことに気づいてくれるか、急に隠れてみたら

ものすごくとおくまであの人は歩いていって

それからやっと、気づいて

引き返す。


あたしはすぐに

隠れるのをやめて

あの人に手を振る


あの人を安心させたいんじゃなくて

自分を安心させたくて

手を振る


ずっと隠れてればよかった。

あのひとが

私を忘れてしまうまで。


私を探すのをやめて

見えなくなるくらいまで遠くに行ってしまうまで。


そうしたらやっと私は

自分の道を歩けるようになる。

ひかり

あなたがそこに立ってるだけで

なんだかもうそこをちゃんと見れないような


あなたがそこに立ってるだけで

胸んなかをどしゃぶりの雨がふるような


ふるえるような恋をした


そのことを一回だって

後悔したことはない


だけど今は少し

あなたがもうどっかに行っちゃえばいいのにと

思ってる


そしたら

あのむねんなかがどしゃ降りになるような気持ちを

他の誰かと比べないですむでしょ


あなた以外には

わたしは

あんなふうにならないの


あんなふうになれないの

シャツ

シャツを引きずる

引きずって歩くとシャツはひどく重い

あの人の残骸がこんなに歩きにくくしてるんだ


どうして


どうしてあの人は


と思う前にあたしに話しかけて

注意をそらせて


あっという間においこされていく

硬い靴音の波にふと


どうして


どうしてあたしじゃだめだったの


考えてしまうから

はやくここをとおりすぎろ


間違ってる

それは間違ってる


あたしは今

間違えてるだけなんだ


シャツをひきずって歩く

思いはもう、きれいなんてとてもいえない代物になった。


ちっ。

友人Kからの電話で

何かと思ったら


「好きな娘に告白しようとおもうんやけど、今日、電話で言うか、

今度会った時言うか、どっちがいいと思う?」

という電話だった。


ちっ。


「え?なんかテンション低いな~、てこっつぁん、どうした?」


ちっ。

だって、むかつくんだもん。

あんたこないだ別れたばっかじゃん、

あたしとおんなじ時期だったじゃん、

それなのにもう一人でずんずん進んじゃってさ、

それにさ、

なにより、

だいたいさ、


あたしK取られるのやなんだもん!!

前の彼女と別れた時もせいせいしたもん!


好きだとかそういうのと、違うくて

付き合う気もさらさらないけど、

お前いい奴だし、熱いから、独り占めしたいんだもん!




電話で今夜、告白することに決めたKは、


「おれ、さっきまでどうしよ~と思って

てこっつぁんが前にくれたMD聞いててんで。

ピンチの時はあれ聞くようにしてるから」


と、しんみりした声で言う。




ちっ。


仕方ないから、

応援してやる。


今回もまた。








もえいづるはる

なにかを

奪われたわけでも

傷つけられたわけでも ない


あの人の言うことが

あまりによくわかるので

わたしもうなづくしかできなかった


帰り道の

ポプラの枝から


ぶわぁー

ぶわぁーっと


四方八方に

萌えいづる新芽に


わたしも

あとすこしで

もうすこしで

咲くような気がした


あの人は私の振り返って駆け込むドアを

閉じた


咲くしかない

土にはもぐれない


となりのトトロの映画のように


ざわざわと

のびてゆくのを感じる


根を張った土はもうじゅうぶん暖まった


もうすこし

あとすこしな

気がしている。

説明

友達が
カラオケとごはんと
連れてってくれた。

けど
うまく説明できんくて
なんか

何が悲しいとか
何が悔しいとか
なんかうまく言えんかって

ちゃんと言いたかったんやけど。

説明するとな、


喉のとこにな、
石が入ってるみたいでな、

なんか

わからんままに
笑ってるねん

喉のとこの石、
吐き出したいから
泣きたいんやけどな、

なんかうまく涙が出てこうへんとな、

「なんでそんなふうに悩んでるのに
まだ笑ってるの?」
て先輩に聞かれても

なんか

「だってこういう顔ですから」

て、また
笑ってしまうねん。

へんやな。
忙しすぎると
泣くのもへたになんのかな




なんか喉がいたいねん。

もんく

ねむいし

あたしにとったら人生かけた恋終わったんやし


もうちょっと

神さまは手加減してくれてもええんじゃないん?


この仕事の量はどうなんですか。

この思い出の量はどうなんですか。

この苦しい言葉の応酬はなんなんですか。


神さま うちがいくら今まで乗り越えてきたからといって

次もべつに平気ってわけじゃないですよ

悲しいことは、いつも新しく悲しいんですよ


いくら顔がぼんやりしてるからって

決めつけんといてほしいなあ


もっとやわなんやから

もうちょっと


許してくれへんかな


どんなとこにも

逃げられないのでは

息を止めるしか方法がなくなってしまいます。


うちはいつ、許されるんよ。

いやだ

もう考えを吐き出すことでしか

自分をコントロールできない

そこらじゅうにただよってる

思い出とか後悔とか

吸い込んでしまうから

だれもいない部屋には

それが充満しているから

自分が吐き出し続けなきゃ

なにも吸い込まないように

吐き出し続けなきゃ


こんな日に限って

ちっともテレビは面白くなくて

こんな日に限って

お弁当はしっかりとまずい



無題

つみかさねても

つみかさねても

こわれてしまう

もういや

今度こそ

今度こそ

いつも

いつも

おもうのに


ごはんたべなあかんやん

ごはんたべなあかん


なんもかなしくないやんか

あの人やって言ってたやんか

前進のためにきめたことやんか


ごはんたべな

ごはん食べなあかんやん


でも


もう会われへんのが

怖いねん




つみかさねるのに

何回崩されても

つみかさねてきたのに


なんで

なんでこんなふうに

なってしまうの